急性虫垂炎とは
いわゆる右の下腹部が痛くなる、一般的に盲腸と呼ばれている疾患は、正しくは急性虫垂炎と言います。虫垂に炎症が起きて差し込むような痛みがあります。
盲腸の正式名称が虫垂だと思っている人も多いと思いますが、実はこれらは別物で、盲腸からぴょろっと細く伸びているのが虫垂なんです。
手術でお腹を開いたときに、すでに盲腸に虫垂が張り付いていたことから、昔は盲腸炎と呼ばれてきました。
虫垂の入り口が閉じてしまい、中で炎症を起こしている状態が虫垂炎です。急に症状が出てお腹が突然痛くなるものは急性虫垂炎と呼ばれます。
痛みがそれほど強くなく、出たり収まったりを繰り返している場合は、慢性虫垂炎と言われることもあります。お医者さんは「アッペ」と呼びます。ちょっとかわいいですね。実は、この病気を引き起こす原因は、はっきりとは分かっていません。
風邪やインフルエンザほどではないにしろ、かなり一般的になじみのある病気です。そのため、軽く考える人が多いかもしれませんが、場合によっては死に至る怖い疾患なんです。手術のできない江戸時代では、お灸や漢方薬で治療をしていたそうですが、致死率は非常に高いものでした。日本では、明治時代の後半になってから虫垂切除を行い始めましたが、この時代の死亡率は15%ほどでした。
また、お腹の痛くなる疾患はとても多いので、正確な診断が難しい面も。手術で虫垂を切除された人たちの15.5%は、虫垂炎ではなかったという報告もあるくらいです。(JAMA 2001「Has misdiagnosis of appendicitis decreased over time? A population-based analysis.」)
炎症がひどくない場合には、抗生物質の投与によって治す(散らすと言いますよね)ことも増えてきています。
薬で散らした場合には、いつか再発する可能性が高いので注意が必要です。手術で取ってしまえば、当然再発することはありません。
私と同室の虫垂炎の方
私が急性虫垂炎で手術を受けた日、おなじく虫垂炎の方が4人いたそうです。
そのうちの一人と同室になりました。その方は、手術では無く抗生物質を点滴で打って様子を見ていました。
というのも、その方は動脈硬化の持病を持っているため、血液をサラサラにする薬を常用されていたからです。
手術は、当たり前ですが皮膚を切ります。つまりは血が出ます。血液をサラサラにする薬を飲んでいると、出血が止まらないため、危険なのです。
抗生物質で虫垂の炎症が治まるか様子見するということでした。炎症が治まらなければ手術をしなくてはならないので、血液の薬をストップしていました。
その方は、当然何も食べられない絶食状態です。食事の時間はカーテンを閉めて閉じこもっていました。
結果的に、抗生物質で炎症が治まり、めでたく退院していきました。
放っておくと腹膜炎に?
「虫垂がかなり腫れてましたね。手術がもう少し遅かったら、破裂して大変だったかもしれませんね。」
こんな台詞を医者に言われた人も多いのでは無いでしょうか。虫垂炎を放っておくと、穴が空いて(穿孔)、膿が漏れて腹膜炎になってしまう場合があります。
バイ菌がお腹全体に広がってしまうイメージですね。お腹全体に鋭い痛みが広がり、お腹が板のように硬くなります。発熱や嘔吐、心拍数の増加や悪寒などもみられます。
腹膜というのは、お腹の内臓を包んでいる膜だと思ってください。腹膜炎になると、入院期間が1ヶ月以上になることもめずらしくありません。症状が進むと、死亡率も上がりたいへん怖い病気です。
お腹が痛いのを何日も我慢していると、大変なことになるかも知れません。
乳幼児はまだ虫垂の壁が薄いために、すぐに穴が開いてしまいます。子供は特に診断の遅れが命取りになってしまうんです。
悲しいことに、腹膜炎を便秘と診断され、翌日に亡くなった方もいるそうです。
それだけ、腹痛という症状は診断が難しいとも言えます。
早期に治療する必要があります。穿孔までの変気時間は、発症から34時間です。
もしもお腹の痛みが続いている人は、すぐに病院へ行ってください。
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